|
日中懇談会はこれまでも有意義な会合を展開してきた。今回は「日中協力でいかに中国市場を開拓するか」というテーマでパネルディスカッションを行うが、まず、パネリストの簡単な自己紹介から始める。 |
|
これまで当社のアウトソーシング事業は順調であるが、今日は、中国市場への進出を目指す日系企業に対して意見を聞かせてもらいたい。日中懇談会は有意義であり、過去5、6回発表してきた。今後も日中IT協力に貢献したいと考えている。 |
|
3年前北京に駐在しており、その時はオフショア開発がメインであった。今後はオフショアだけでなく、市場開拓で人脈作りを目指す。今日は良い情報交換を期待している。 |
|
これまでの対日アウトソーシングに加え、今日の議題は有意義である。会場の在席者とも情報共有したい。 |
|
業務は日本市場を中心に行っており、輸出パートナーは日本である。優秀なソリューションを中国へ持ち帰り、中国市場で展開している。 |
|
ITサービスアウトソーシングを7,000名体制で行っている。資本がヨーロッパであるため、業務内容は欧米中心である。当社の幹部は欧米からの帰国者である。日本市場に注目しており、日本市場でいかに成功するかについても聞きたい。相互信頼を強化し、より高いレベルでの協力関係を構築したい。 |
|
商社系ソフト会社に30年勤めたが、日本のソフトウェア企業は行き詰まっているように感じた。これを変えるには外資への転職しかないと思った。日本は外圧に弱いので、中国の力を借りて元気になればいいと思う。3年前に大連海輝に入り、続いて、大連百易に転職した。日本市場中心のオフショアでは、中国は力を発揮できない。よって、日中双方向のブリッジングを主な仕事としている。金融危機は最大のチャンスであり、新しい意味での協力を望んでいる。 |
|
日中部会で日頃話し合っていることを日中懇談会の場で共有できないかという思いがあり、一昨年の第11回日中懇談会(東京)では「これまでの10年、これからの10年」というテーマでパネルディスカッションを行った。今回は2年ぶりとなるが、金融危機で中国市場に対する認識が高まったこともあり、「日中協力でいかに中国市場を開拓するか」というテーマで行う。まず、NECソフトの森田さんからこの問題について発表していただき、たたき台としたい。 |
|
今日の議題である「日中協力でいかに中国市場を開拓するか」について、業界における一般的な課題として4つの説明をしたい。
@ IT分野における日本企業の知名度向上――日本企業はアウトソーシングでは知名度は上がっているが、IT企業の知名度はまだ十分ではない。今後、日本の自動車や家電と同じように、ハイエンド領域の開拓、ブランド確立、企業知名度アップを目指さなければならない。
A 中国・グローバル市場開拓向け人材育成が急務――従来のオフショア開発を中心とする提携により、日本語対応が可能な中国人技術者が増えていることもあり、営業力、技術力を併せ持った社内人材の育成をしなければならない。そして、今後は、現地法人トップや上級管理者の現地化が急務である。
B 情報セキュリティ管理の強化・徹底――情報セキュリティ管理の強化による“安全・安心”の信頼性の更なる向上が必要であり、自社及び中国の同業他社にも著作権(侵害を含む)の対応管理の強化を望む。
C 中国市場の不透明性――中国市場には政府案件、大型案件の入札が多いが、評価制度が不明確であるため、選定の方法・経緯が明確に示されないことが多く、却下された原因がわからない。
さらに、中国側への要望事項を4点挙げさせてもらう。
@ 情報処理のセキュリティ製品 への規制撤廃――ファイアウォールなどのセキュリティ製品に対するCCC強制認証を取得しないと、中国国内での販売をすることができない。現時点では、政府調達に限定しているが、今後の動きは不透明であるため完全に撤廃してほしい。
A 暗号製品の販売認可規制の緩和――暗号を含むセキュリティソフトの販売には、中国政府の認可が必要。しかしその認可を外資系企業が取得するのは困難であるため緩和してほしい。
B 国産ソフト優遇税制の撤廃――現在、中国産ソフトは増値税17%のうち14%が還付されるが、 外国産ソフトは還付されず、価格面で競争力が弱いため中国産ソフト同等にしてほしい。
C 外資IT企業に対する規制緩和(ICP許可証)――ASP事業はICP許可証が必要であるが、外資系企業は取得できないので、規制を緩和してほしい。
これらについて、中国ソフトウェア産業協会を通じて、中国政府に要望をお願いしたい。
|
|
現状、悩み、問題について発表をお願いする。 |
|
20年近く前から市場への模索を始めていたが、日本企業が中国市場へ参入するのは個人的には不可能という結論に達していた。オフショア開発パートナーが市場開拓パートナーになり得ると考えていたが、まだ対応はできていない。我々の努力が足りないのか。戦略の見直しが必要なのか。制度的なものなのか。1〜2年で成果が出なければあきらめてしまう傾向もあると思う。中国の内需拡大で、数字を見ると市場は大きいが、一企業では開拓はできない。中国企業が日本への売り込む場合、一企業ではなく、政府を含めて来日する。中国側は相当努力している。昨日の打ち合わせで、CCC認証についての話題があり、中国人はあまり気にしていないが、日本人はまじめに悩む。中国人の大らかな面、日本人の繊細な面を組み合わせて一緒にやっていくことだろうと思う。中国市場開拓はパートナーと進めなければ不可能である。 |
|
当社は70%が日本向けオフショア開発、30%が中国国内日系企業その他への対応である。日本のITサービスノウハウを中国で活用している。日本には中国に足りないノウハウがある。例えば、コンビニについて。日本のコンビニは店舗面積が小さい割に品揃えがよく、しかも品切れしないが、中国のコンビニは店舗面積が広くても品揃えが少ない。これは、情報管理面での大きなギャップがあるためである。また、銀行の例では、日本ではインターネットで簡単に送金できる。送金先の口座も見える。ところが、中国のシステムでは振り込みしても送金先が見えない。日本の技術を中国に導入できるポテンシャルがある。情報サービス業では、なぜ製造業のようにできないのか。中国市場はポテンシャルがあるが、日本企業は中国市場開拓への長期視点での考えやパワーが足りない。中国市場は常に変化しているため、5年、10年計画を立てても無駄になる。その間に大きなチャンスを逃してしまう。中国現地側の考えを共有しながら行えば、情報管理面での市場参入の大きなポテンシャルがあると考える。 |
|
信頼関係の構築には時間がかかる。現在日本のIT企業は不況で汲々としている。IT企業同士で意見交換する良いタイミングである。日本の国内市場の変化はどうか?グローバル市場の変化はどうか?そして、中国市場にどんな機会が潜んでいるのか?これらを見つけるのが課題である。 |
|
森田さんから中国の保護主義について発表があったが、自分もその意見に賛成である。これらは、日中双方で努力して解決していくべきである。日中は互恵の関係であり、一緒に世界に挑戦すれば、どんな難関も乗り越えられるはずである。 |
|
中国企業における日本人マネージャとして、中国市場をどう見ているか? |
|
中国市場へ入るには、提案力が必要である。良いソリューションを持っている会社と組むことが、中国市場への参入の条件だと思う。日本の産業ソリューションパッケージを中国に持ち込んだが、価格が高くてなかなか売れない。日本から持ってくるものが受け入れられるかが問題である。中国はコスト削減を歓迎するが、人材削減は歓迎されない。中国のニーズとは何かをつかむことが重要である。 |
|
本質的な問題はなにか? |
|
意識の問題だと思う。中国市場を重視しているかどうかである。意識していれば、良い利益が得られる。日本人は細かいところまで気がつくが、中国市場に対する認識が課題である。例えば、中国の携帯電話ユーザは7億人である。日本の携帯電話は品質に問題ないが、中国で売られていない。携帯電話メーカは中国市場を見捨てたと思っている。ソフトウェア産業は中国市場を見捨てないでほしい。中国市場は成熟していないが、年々進歩している。中国市場に対する共鳴という積極的な態度で臨んでほしい。 |
|
日本の携帯電話メーカは、中国市場を見捨てたのではなく、意識は持っているはずである。 |
|
市場シェアについて研究していないという意味で言った。 |
|
日本に対して厳しい意見である。しかし、日本企業は中国市場をあきらめるようなことはない。携帯電話についても同じである。日本のソフトウェア産業はドメスティック産業であり、99%が外国で製品を売ったことがない。中国市場に出て行きたいが、代金回収が困難であるなどの過去の失敗経験が心をよぎる。中国脅威論である。「中国は変わった」ということが目に見えてくれば、積極的に出られる。 |
|
馮:中国市場は難しい。大多数の日本企業に欧米企業より良い製品があるのかと問えば、それはないと思う。日本企業は中国市場に対する研究が足りない。そのためステータスが低い。欧米のIT企業のチャレンジの度合いを見てほしい。IBMは技術面で世界をリードした。IBMと競争したらわかる。 |
|
家電業界は研究を重ね、ブランドを重視してきた。ソフトウェアは価格競争力がないと認識されない。正確さより中国の消費者に合うのかを見るべきである。中国市場は欧米企業の理念に共感しやすい。日本は戦略的でない。 |
|
日本企業は中国市場を重視していないのではない。中国市場のポテンシャルを認識している。ただ、日本企業のやり方は、より良いやり方ではない。日本企業は意思決定が遅い。中国市場は変化が速い。ローカルの認識、速い対策が重要であり、現状判断できる人材を育成すること。また、現地法人の権限が小さく、現地の意見が重視されないために市場に乗り遅れる傾向にある。リスクヘッジな態度は問題であり、単純に「郷に入れば郷に従う」ことがビジネスには重要である。日本や欧米のような成熟市場とは別に、中国市場は現場を重視すべきであり、トップレベルの企業と提携し、双方の利益が得られるよう長期的に行うべきである。 |
|
日本側に一番大きな問題は何か? |
|
胡さんから厳しい指摘があった。日本の経営者の啓蒙をすべき。中国は大きな市場になることは知っており、どうやるか考えている。スピードは遅いが一歩一歩進めていることは確かである。日本の経営者に実態を見てもらってスピードアップを図れればいいのだが。必ず欧米に負けないようにやる。ただ、日中提携がなければ、日本企業だけで中国市場開拓は無理。 |
|
会場K(中国人男性経営者):昨年以来、アウトソーシングの受注が減り、中国市場への進出を試みた。1〜2年では投資の回収はできない。しかし今日、市場を見極めること、自信、意志、これらをもとに会社の方向性を定めることが重要だと言うことがわかった。 |
|
会場N(中国人女性経営者):日本で20年、中国で27年、中国市場、日本市場の開拓をやってきた。なぜ、日本企業が中国市場に進出できないのか?文化、性別が無視されているから。まず、中国語のできる人を育成し、中国文化を自分のものにすること。それで、中国人と付き合うこと。一所懸命粘り強くやらないと中国市場の開拓はできない。 |
|
会場MA(日本人男性マネージャ):10年前中国に常駐していた。当時、ソフトウェア産業の黎明期であり、アウトソーシングではなく、中国市場開拓に取り組んでいた。オフショア従業員を中国市場開拓で使うつもりでいた。だが、我々日系企業の考え方は間違っていた。これからは、製品市場開拓をやってもらう。会社ブランドがないわけではない。 |
|
中国の会社として、日本のソリューションを売っている。苦労しているが、将来は明るいと思っている。サービスでは日本は世界一。顧客満足を重視している。日本はすばらしい産業ソリューションを持っている。近い将来、中国も目を向けるはず。日本のオフショアで勉強した中国企業はサービスの重要性を知っているので提携できる。製造業と同じように、中国市場は信頼できる中国人に任せることである。 |
|
宇田さんの意見に賛成。日本の大企業は、独資または合弁で中国現地法人があるが、単なるアウトソーシング企業になっている。最初は市場開拓に向けた人材育成を考えていたのかもしれない。そのためには知的所有権の問題、信頼関係構築、デザイン、設計、双方向的な人材、マーケットニーズは何か、を知らなければならない。ところがオフショアをなぜやるのか、どんなソリューションを提供するのかもわかっていない。これでは市場開拓では能力不足になる。これからの人材育成では戦略が必要になる。 |
|
会場のMAさんの意見に賛成。オフショアで日本の技術に慣れてもらい中国市場開拓へということについてである。ただし、プログラミング要員に依存しての中国市場開拓は難しい。中国市場で製造能力を持たなければならない。 |
|
会場M(中国人女性マネージャ):山東省済南市から来た。中国市場開拓で重要なことは、現地化する人材の最大限の能力の発揮である。 |
|
日本と中国は相互に優位性を発揮し、互恵で発展すべきと考える。自分は日本に帰化した。日本では在日中国人向けのボランティア活動をしていたが、天津市政府から外国人として表彰された。日本には世界でもトップレベルのマネジメントノウハウがあり、日本の優秀なノウハウや経験を中国人も学ぶべきである。これを実現させるために、お互いに相手の利益を考えて行動することである。政治的問題もあるが、IT産業界の交流に関しては、隔たりをなくしていけば、良い効果が得られる。 |
|
今後のITマーケットでは、クリエイティブであることが重要である。優秀な人材と組めば、欧米にも負けないはず。 |
|
これからは大企業だけでなく中小企業も発展のチャンスがある。ネットワーク、SaaSをどう利用するかで勝負が決まる。本日は大きなテーマですばらしいディスカッションであった。コミュニケーションと相互信頼は必要である。コミュニケーションと相互信頼があれば、市場開拓は可能である。 |